ブログなど記事を書いていると、必然的に他人の文章を引用したくなる場面に出くわします。
他人の文章や画像などを引用することは法的に認められていますので、著作権者の許可を得ることなく自由に行うことができます。ただし、正しく行うことが必要で、その要件は厳格に定められています。
要件を満たしてなければ、いかに引用しているように見えても当然法的な引用に当たリません。つまり違法ということです。
ネット上では引用のように見えて実は引用に当たらないものも存在します。「他人がやっているから大丈夫」で済まされませんので、正しい知識と方法を学んでおきましょう。
万が一法的な紛争に発展したら最悪の場合、損害賠償の支払いを命じられたり、刑事罰が課されることになります。
こうならないための正しい引用の書き方と注意点を説明します。
著作権とは
正しく引用を行わないと著作権の侵害となる恐れがありますが、まずはその著作権とは何か?というところから始めましょう。
著作権は「著作物」を保護するための権利です。
では著作物とは何かというと、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義されています。そして「著作者」は著作物を創作した人のこといいます。
多くの場合は著作者が著作権で保護される権利(著作権者)を持っている人ですが、著作権は自由に譲渡できますので、必ずしも「著作者=著作権者」ではないことは心に留めておきましょう。
著作権侵害とならないケース
ここで説明する「引用」以外にもいくつか著作権の侵害に当たらないケースがあります。ブログに関係しそうなものをいくつかあげると、以下のようなものがあります。
- そもそも著作物に当たらない
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著作物の定義は前述しましたが、この定義に当てはまらなければ著作物ではないので保護対象になりません。
- 憲法や法律、裁判所の判決など
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これらは保護するものというより、広く国民へ知らせるべきものであるため例外的に著作権の保護対象とはなっていません。
- 著作者の死後70年以上経過した著作物
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著作権には保護期間があります。保護期間を過ぎるともはや著作権によっては保護されません。「青空文庫」などで公開されている本の多くは、この保護期間を過ぎたものです。
昔は「死後50年」でしたが、改正法では「死後70年」に延長されているので注意してください。平成30(2018)年12月30日の前日において著作権等が消滅していない著作物等についてのみ保護期間が延長されます。しかし、それ以前に保護期間を経過しているものについては延長されません。
- 著作権者の許可を得る
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著作権者の許可を受けていればもちろん大丈夫です。ただし当然ですが「許可を受けた範囲内」で利用する必要があります。
著作権で保護されないものも他にもありますが、「明らかに保護されないもの」や「明らかに著作物でないもの」を除いては引用を条件を満たしておく方が無難でしょう。
これらの境界は曖昧な部分も多いので、最終的には裁判所の判断するものになるからです。
正しい引用の方法
ここからは正しい引用の方法について説明しましょう。
文化庁のサイトに「引用における注意事項」として注意点が掲載されていますので、その内容からみてみましょう。
(注5)引用における注意事項
他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。
(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
(参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)
出典:(注5)引用における注意事項 | 著作物が自由に使える場合 | 文化庁
概ねこれで良いのですが、注意点をもう少し付け加えておきます。
- 引用部分が公表された著作物であること
- 引用は「必要な範囲」で行われていること
- 改変をしないこと
これらの要件を「すべて」満たしてなければ引用とはみなされず、違法となる可能性がありますのでくれぐれも注意してください。
それではこれらの注意点について、書き方も含めて一つ一つ順に詳しくみていきましょう。
著作物を引用する必然性があること
ブログの記事を書いているのであれば、その記事のために本当に引用が必要か考える必要があります。引用せずとも他の表現方法で同様な説明ができるのであれば、必然性がないと判断されるかもしれません。
例えばある記事の主張に反論したい場合は、その「元となる主張」を引用しなければ何に反論しているか読者にうまく伝えられないでしょう。また、ある本の一節がとても気に入ったという記事でしたら、その一節を引用しなければ、おそらく記事を読んでる人には何が気に入ったのかわからない思います。
このような場合は必然性があるとして認められるでしょう。
ただし、引用する部分は「必要な範囲」で行う必要があります。必要のない部分まで掲載すれば、その部分は引用とは認められません。
自分の著作物と引用部分が区別されていること
典型的には鉤括弧(「」)や引用符(””)で囲んだりすることですが、ブログであれば<blockquote>タグで囲ってあれば大抵は大丈夫でしょう。
<blockquote>タグで囲った部分はインデント、背景色、引用符などで囲まれて他とははっきりと区別できると思います。もしも本文と区別がつきにくくなっている場合は、CSSを使って区別できるようにしましょう。
主従関係が明確であること
これは量的にも質的にも自分の著作物が「主」であることが必要です。
ほとんど本文がなく「詳しくは以下の引用を参照してください」などとしてはいけません。あくまでの自己の著作物が主体であり引用は主体を補強・補足するためにものです。
もし引用部分を削除して、まったく意味がわからなくなってしまうような記事でしたら、おそらくその記事はこの要件を満たしていないでしょう。
出所の明示がなされていること
引用した部分をどこから持ってきたものか明示する必要があります。
ブログで引用する場合は以下のような情報を引用元として記述します。
- Webサイトからの引用
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「Webサイト名」、「ページタイトル」、「URL(あるいはリンク)」などを明記します。
- 書籍からの引用
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「著者名」、「書籍のタイトル」、「出版社」「出版年」「引用ページ」などを記載します。
いろいろ調べてもみましたが、ブログで引用する場合の記載項目に明確な基準はありませんでした。サイトによって記載項目にもばらつきがある状態です。これはWebが他の媒体に比べ新しく、また個人での発信も多いためだと思います。
したがって基準としては、誰がみても引用元の箇所を特定できる内容を記載するように心がけましょう。
書籍からの引用に関しては、同じものがいろいろな出版社から様々な形で出版されることもありますので、その分詳細な記載が必要なこともあると思います。
正式な論文や出版では一般的な慣行がありますので、それに従う必要があります。
くれぐれも第三者が見て「結局出所はどこなの?」とならないように気をつけましょう。
引用部分が公表された著作物であること
著作物でも世間一般に公表されたものしか引用できません。一般にアクセスできるWebサイトであれば公表された著作物ですので引用することが可能です。
必要な範囲の引用であること
「引用の必然性」や「著作権者への許可」でも述べましたが、引用は「必要な範囲」、言い換えれば「必要最小限の範囲」で行います。
必要のない部分も含めてむやみやたらに引用してはいけません。引用する場合は本当にその部分も必要かよく考えて引用しましょう。
改変しないこと
引用するときは、一字一句そのまま引用しましょう。下手に修正してしまうと著作者人格権の「同一性保持権」を侵害してしまう恐れがあります。
どうしても要約したい場合は、その方法をきちんと調べてから行ってください。
まとめ
法律が引用を認める背景としては、著作物の権利を過度に保護すると、かえって社会全体にとって不利益になるからです。
引用という制度がない世界を想像してみてください。文章の明確さは失われ、質や価値は低下します。文章を書くのにも手間や苦労は増え、やがて社会へ発信される情報も今よりもずっと減ることになるでしょう。
これは社会全体で見ればもったいないことです。そのため著作物の保護をある程度制限し、一定の条件のもとで引用が認められています。引用はいわば著作物の保護と公共の福祉を調節する機能を果たすものです。
このように、みんなのために保護が制限され引用が自由にできるようになっていますので、著作権者への敬意や感謝の気持ちを忘れないようにしましょう。